2007年 10月 30日
ボローニャ、鳥になった日
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入学案内の注意書きに書いてあったこの言葉にビビリながらこの街にやって来た。
交通規則を全く無視するとまでは行かなくても、とにかく無視する機会を虎視眈々と狙っているのが彼等ボローニャのバイク乗り達である。
北部出身の教師、ナッザレーナが初めてナポリに旅行に行った時の事。北部と比べ物にならないほどの交通事情の凄まじさに、最初は道を渡る事が出来ずに泣いてしまったと言う。
だが、彼女はすぐある事に気付いた。
曰く、結局その事情を一番把握しているのは地元のナポリ人たち。歩行者が道を渡ろうと一歩を踏み出せば、彼らは曲芸の様にうまく歩行者をすり抜けて行く。
タクシーに乗っていたとき、向こうから一台のバイクが向かってくる。お互いに道の中心から退こうとせずに、チキンレースの様相を呈する。
所がまさにぶつかろうとするその寸前、あらかじめ動線を申し合わせていたかのように彼らはうまくすれ違ってゆくのだと。
確かに、それぞれが危ない場所だと認識していればいつも以上の注意を払い、逆に事故は起こりにくいのかもしれない。
ボローニャで生活を始めて8ヶ月、確かにこの街のバイクや車も歩行者には注意している様子が所々に伺える。
逆に言えばボローニャ大学の学生を中心とする、歩行者の傍若無人振りが彼等の注意を促す結果になったのだろう。赤信号でも車が止まってくれるだろうと渡りだす歩行者達。
気が付けば、自分もいつの間にか信号の色など気にしないようになってきた。色など関係ない。実際に車が来ているのか、来ていないのか。それが問題である。
赤信号だろうが積極的に道を渡るようになってきた自分も、たまには気まぐれで信号を待つ事がある。
その横を次々と無視して渡る地元ボロネーゼ達。青信号にもかかわらず歩行者のせいで停車せざるを得なくなったドライバーの罵声を楽しむ。
青になった信号を確認し、自転車で道を渡り始める。同時に向こう側の車やバイクがいっせいに停止線を飛び出した。彼らはスタートダッシュに命を掛けている。
先頭車両の安全確認など皆無である。
視界の左側から一台の原付が近づいてくる。同じ進行方向だが彼は右折をしたかったのだろう、こんなときも彼らは横断歩道の手前までスピードを緩めない。
歩行者の直前で停止するのが常である。
このバイクもそうだ、自分を確認しているだろうに相変わらずスピードを緩めない。自分も特に気にすることなく横断を続ける。
所が、まっすぐ前を見る自分の視界の左隅に、再びこのバイクが入ってきた。
何かがおかしい。
体から30センチも離れていないところにバイクが見える、いったいこの距離からどうやってすり抜けると言うのだ。
今朝まで降っていた雨のせいで、路面はまだ少し濡れている。
そして1人の日本人が、ボローニャの曇り空に舞った。
by emilia-bologna
| 2007-10-30 20:26
| 最初の留学